妙な話

先日の図書館の無料英会話クラスのレッスンでHudini(フーディーニ)という20世紀初頭に活躍したハンガリー生まれの魔術師の伝記概略を読むのがあった。

 

プリントを読み、語彙をチェック、質問の後でベネズエラ出身の70代と思われる女性がラスベガスで観たカパーフィールドの魔術ショーの話をしてくれた。

 

檻の中のホワイトライオンが消えるマジックとかの話だったがそのついでにという感じで自分が体験したという不思議な事を話したのだった。

 

何年か前に彼女の母親が危篤だということでベネズエラに戻り、母親の入院先に見舞いに行ったのだそうだ。

 

母親が言うには若い時に亡くなった自分の夫が枕元にやってきていろいろと話をしたのだそうだ。

 

そんな訳はないと思いながら、その女性が看護婦に誰か面会に来ていた人でもいましたかと聞くと、どなたか若い男性が彼女の枕元に立っていて話をしているようでしたという返事があったという。

 

若くして亡くなった夫が昔の若いときのままの姿で妻の臨終の際に迎えにきていたのだろうかと彼女は訝っていた。

 

母親の夫、つまり自分の父親は彼女が5歳の頃に亡くなっていてその葬式にはお墓の前に彼女と同い年か少し年上の二人の子供がお墓に向かって歩いてきたのだそうで、どうやらその子供たちは隠し子だったなどというおまけ話までしてくれた。

 

その彼女の話に続けて、今度はエクアドル出身のやはり70代前後の女性が自分の母親の亡くなる前の様子を話してくれた。

 

彼女の両親はイタリアから移民してきたそうで、普段はスペイン語を家族間で喋っていたが、亡くなる前には独り言のようにイタリア語で誰かと会話をするように喋っていたらしい。どうかしたかと聞くと、イタリアから彼女の母親や姉妹が訪ねてきているのでイタリア語で話しているのだと答えたそうである。姉妹はとにかく母親はとうに亡くなっていたそうだが。

 

先にあげた女性の話の中ではベッドの枕元に若い男性が立って母親と会話しているのを目撃した看護婦さんがいるということが気になるが、いずれも意識が朦朧とした中での幻影、幻聴ではなかろうか。

 

僕も何か話す番になった。

 

日本の恐山にはいたこという霊媒師がいて、遺族に霊媒師の口を借りて言い残したことなどを伝える女性たちがいる。

 

随分大昔のTV番組で観たその様子を話した。

 

「よく来てくれた。遠いところを大変だったろう」などと遺族の妻に声を低く、男性のモノマネで語りかけるように話す。

 

「皆は元気か? そうかそうか良かった。お前も健康には気をつけて暮らしてくれ」

 

などと優しい声を掛ける。それを聞いた妻も涙ぐみながらあの世でも達者にしているようで安心したなどと答えている。

 

つまり、当たり障りのない会話というか応答をして遺族の気持ちをなだめるというか、安心させるという効能はあるのである。

 

つい、余計なことまで言ってしまった。

 

憑依から戻った霊媒師は客である遺族に言うのである。「お値段はいくらになります」