バルサンはスーパーごきぶりであった。 (おいおい、突然かよ~)
体力的な面ではなく、その知的な部分での能力は ゴキブリとは思えないほどの能力を持っていたのだった。
まず、人間の言葉を解する。 これは言葉自体を理解する能力というより、 一種のテレパシーのようなものなのだろう。
人間同士の会話が、言語を通じてではなく 彼らの話している言葉の意味がバルサンには直接理解できたのだった。 テレパシーが生命体の発する脳波や生命エネルギーを感知する能力だとすると つまり、バルサンは生物なら種類を問わずにそれらの考えていることを 理解できたのであった。
では何故、バルサンは無機質であるTVやラジオ放送まで理解できたのだろうか? ウチナーおじさんはそこまでは追求したくない。 あなた自身で考えて欲しい。(という、便利な逃げの手があるのだった)
それは無責任だと怒られる方もいるかも知れないが、 世の中には熊のくせに人間の言葉を話したり、蜂がやはり言葉を 話したりする物語があふれている。
しかし、何故熊が喋れるのかとか、蜂が喋るということに対して 何らかの理由や、具体的な説明をしている作者がいるであろうか・・とあえて問いたい。
バルサンが人間の言葉を理解できるのはテレパシーのせいだと ちゃんと説明しているウチナーおじさんはかえって親切すぎるほどである。
と、まあそういう訳でバルサンは自分の周りの世界のことを徐々に学習していった。
ある夜のことである。 バルサンは住んでいる木造平屋の屋根の上に登って周りを見渡していた。
北東の方3~4km先の丘には「宗」の文字の 赤い輪に囲まれたネオンが点滅していた。 沖縄でローカルの企業で味噌や醤油を作る会社のネオンであった。
ちなみにバルサンの住んでいる家の長女は高校生の頃に 赤丸宗提供のラジオの喉自慢コンクールに出て一点賞を貰い 味噌や醤油をお土産にもらって帰ったことがあったそうである。
さらにその右の方にはやや離れてTV塔が赤いランプを点滅させて立っていた。 東京タワーとは比べられない単なる鉄骨のタワーだが 高い建物のない那覇市のさらに首里の丘にそびえるように立っていて目立っていた。
南西にはなだらかな斜面に沿って一面の菊畑が広がっていた。 そしてその斜面の先、丘の上には鉄条網のついた金網が張り巡らされた 円筒形の米軍のジェット燃料タンクが銀色に光っていた。
屋根の上から見えるのは一基のタンクだけだが、その広大な敷地内には 数十基のタンクがそれぞれある程度の距離を置いて立っていたのだった。
時おり、丘の上にライフルを肩にかけたガードマンが軍用犬を連れて 見回りしている姿が遠くから見えることもあった。
北西には那覇市の中心街があり、大越というデパートの屋上から放射される サーチライトが夜空に照らし出され、雲に反射して動いているのが見えた。
バルサンは屋根の上からはるか北の方の夜空を眺めては そこに行けばあるというヤンバルの森への旅立ちをあらたにするのだった。
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コメント(2)
おはようございます~。昨日、仕事が忙しくて忘れてたら、指摘を受けたので、慌ててもらいにきました~^^貰っていきます~。
2006/12/16(土) 午後 1:15返信する
バルサン、この頃チルダイ(疲れている)のか、なかなか前に進みませんね。次回はいよいよコザ市に飛ぶ予定です。ちょっとギャグが少ないのが気がかりです。
2006/12/17(日) 午後 0:43返信する